さあ、何してこの夜を過ごす?    




蠱惑的彼女





【蠱惑的(こわくてき)】
[形動]人の心を引きつけてまどわすさま。【例:「蠱惑的な姿勢」、「蠱惑的な瞳」】





















































白く、マシュマロのような肌。火照った頬は、ほんのりと薄紅色。 そして十分に乾いていない髪は水を滴らせ、部屋の間接照明の灯りを受けて光っている。
美しく整ったそれら全部に、手を伸ばしぐしゃぐしゃにしてしまいたいという変な欲望に駆られる。 その変な欲望を、額に掌を当てて押さえ込んだ。


それにしても、何だってこいつはこんなにも無防備なんだろうか。 風呂上りのはタオルを髪に当てたまま、 ソファに横になって今注目のTVドラマを見ている最中だ。
風呂上りというのはとてもヤラシイ気がする。だって反則じゃないか。
まず、露出が多い。ひっらひらのレースのキャミソールに短パン。 この短パンは膝上20cmのところにあるんじゃないだろうか。とにかく太ももが見えてる。
そして俺の目はかなり開いた胸元にどうしても目がいくようだ。




「ねぇジャン、このヒロインの子可愛いと思わない?」
「え、あ、そう…だな」
「わぁ、何どもってんのよー。え、タイプ?タイプなの?」
「ま、まぁ、…なぁ」
「へー。意外と良い趣味してんじゃないの」





お前の方がよっぽど可愛いと思うけどな、そんな事はこの口からは言えない。
こいつ、俺を誘っているとしか思えない。どうする、どうする俺。 落ち着け、落ち着くんだ。こいつはただ風呂上りなだけで、ただTVを見ているだけで、 誘っている訳じゃあない。何なんだ俺、自意識過剰ってやつかおい。


とりあえず、煙草をとって火をつけた。これが一番落ち着く。 するとは顔を歪ませて、俺を睨む。目を逸らしていたが、前方からの視線が痛い。
感じる視線に負けて、の方をちらりと見る。の顔は露骨に嫌そうな顔をしていて、 目を合わせると舌を出して変顔をしてみせた。いわゆる、あっかんべーだ。
こいつ馬鹿だ。そう思ったがそれと一緒に何故か、こいつ可愛い、とか思ってしまった。





「な、。もちっと袖のある服着ねぇ?」
「はぁ?……どこ見てんの馬鹿」
「…。いやそういう意味じゃねぇよ」
「嘘つけー。顔真っ赤だし。えっちー」
「違うっつの…!」





確かに顔は熱いんだけどよ。それを認めたら、何て言われるか分かったもんじゃない。 だってそうだろう?あんなヒッラヒラな露出が多い服、目のやりどころに困るっつの。
あー、やばいやばい。こいつは俺を誘ってるとしか思えない。 というか本当にやばい俺。理性を保て自分。頑張れ自分。





「なんだ。ジャンはこーいう服が好きなワケね」
「勝手に解釈するなっての」
「へーえ、そうかそうかー。じゃあこーいうポーズも好きなワケだ」
「!!…ゴホッ、ゲホッ、…ッ!」
「きゃーあ、いーやーらーしーい!!」
「…!!(お前は馬鹿か…!!)」





死ぬかと思った。煙草の煙でむせたのは何年ぶりだ。の胸寄せ悩殺ポーズで本気で 死ぬところだった。
だから反則なんだって。誘っているとしか思えないんだって。 こいつは本当に一人で外に出せない。
まだケラケラ笑っている。俺はむせて死にかけてるっていうのになんでこんなに笑われなければ ならないんだ。




「…、」
「はぁ?なーんでちゅかー?」
「……襲うぞ」
「…。なーに馬鹿な事言ってんのー」
「いいかげん俺を茶化すのはやめてもらおうか…?」
「何のことですかー」





はそう言って誤魔化していたが、確実にの顔は引き攣っていたのを俺は見逃さなかった。 こういう時、瞳を真っ直ぐに見つめるとすぐに目を逸らすこいつの悪い癖。
それが妙に可愛くて、俺をそそるのをは知らない。





「なぁ、?このカッコは俺を誘ってんだろー?」





抱き寄せると、は嫌そうな顔をした。だけど顔を赤くして、 無理矢理表情を作っているように見えた。俺の目は節穴だろうか。


膝の上に乗せて二の腕にキスをする。彼女の身体はピクリと動き逃げようとしたが その動きを抑え、次は首筋にキスをした。





「……この自意識過剰野郎…」
「分かったから、早く目ェ瞑れよ」












夜はまだ明けない。さぁ、長い夜を楽しもうじゃないか。



















050313)蠱惑的彼女・おわり
気付いたらこんな微エロばっか。ハボの思考がとてもエロいよ。

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